昭和5年、当初素材電柱を納入していた角商店を母体として資本金十二万円のもとに、水溶性防腐剤「マレニット」の加圧注入処理工場を設立。九州木材工業株式会社は誕生します。
防腐剤マレニットによる防腐処理電柱という新たな事業は、年数を経過しないとその新剤の効用・成果が認められないことから、周りの参入企業は次々と撤退。しかし、初代社長角佐次郎と、副社長江田彦太郎は最後まで踏みとどまり、堅く前途を信じ、邁進します。
昭和16年、別会社として東洋木材工業株式会社を設立。鉄道マクラギ、クレオソート注入電柱の製造販売を開始します。
昭和24年には九州木材工業の資本金は150万円、売上高は7,800万円に成長。会社の信用を着実に築いていきます。また、九州電力(株)の要請に応え「マレニット電柱」を共同開発し、耐久性に優れた電柱の生産を開始します。
昭和26年には日本耐火防腐株式会社(現ニッタイ株式会社)との共同出資により、日本マニレット株式会社を設立し、木材防腐防蟻剤の改良開発など、薬剤部門にも進出します。
昭和30年、角武男が二代目社長に就任。初代社長である角佐次郎は会長職に就きます。この時、売上高は2億5,000万円となり、従業員も120名を数える企業へと発展していました。
また創立25周年となるこの年、本社工場に多くの来賓を招き記念式典を開催しました。
翌年の昭和31年、福岡市中央区電気ビル7階に福岡事務所を開設。また本社事務所を新築し、この事務所は一部増築・改修をされながら現在も使用されています。
昭和35年には東洋木材工業株式会社を吸収合併し、業務の統一・合理化を図るとともに、用地の拡張、設備の増強整備をおこないます。
昭和42年に住宅関連用材の防腐・防蟻処理を開始し、新たに建築分野に参入します。その翌年に福岡事務所を電気ビル本館3階に移転。
昭和47年には瀬高ボーリング場を開設し、社員のリフレッシュのための施設としても活用します。
昭和51年、本社内に配電工事部を立ち上げ、九州電力配電線支持物関連保守点検業務を開始します。また、造園工事・除草工事などの環境保全事業にも進出します。
そして昭和54年、九州電力へ複合柱の納入を開始。配電保守業務のエリア拡大に伴い、昭和56年に配電工事部熊本事業所を開設。
また56年に、角和憲(現会長)が三代目社長に就任します。翌57年には、佐賀市内に佐賀事業所を、佐世保市内に長崎事業所をそれぞれ開設します。
昭和59年、しろあり予防駆除事業を開始。また同年、保存処理製材防腐・防蟻JAS認定工場となります。昭和60年に家具用材など、木材の輸入販売を開始。その翌年からは除湿式木材乾燥装置を設置し、無色の防腐・防蟻剤AAC(レザック)の加圧注入を開始します。
平成元年のアジア太平洋博覧会会場建設において、木の部分を当社が担当することになり、防腐処理木材を納入。
そして平成8年、国産材である杉やヒノキの有効利用を促進し、日本の森林を守りたいという想いから、九州大学農学部林産学科の樋口光夫教授(当時)の基礎研究をもとに、同教授の組織した産官学(九州木材工業、福岡県工業技術センターインテリア研究所、九州大学大学院農学研究院)の共同開発がスタートします。
平成9年「産・官・学」による共同研究の結果、ついにエコアコールウッドが完成。特許を出願し、世に発表します。平成11年、本社内にエコアコール注入新工場を完成させ、本格的な生産体制を整えます。
平成13年にはエコアコールウッドで特許を取得。日本木材保存協会にも材料として認定されます。平成16年には国土交通省NETISにも登録され、着実にエコアコールウッドの品質が認められていきます。そして同年、現社長である角博が四代目社長に就任。九州木材工業はまた新たな時代を迎えることとなります。
その翌17年に、愛知万博がガスパビリオン及び回廊の材料としてエコアコールウッドが採用され、さらに平成18年にはエコアコールウッドが「樹脂処理保存処理材」及び「樹脂処理屋外製品部材」としてAQ認証を取得され、同製品の認知度はさらに高まることとなり、多くの民間企業や住宅業界でエコアコールウッドが利用されはじめます。また、家庭用品規制法の基準をクリアーした環境配慮型クレオソートへの全面切替を実施完了しました。
エコアコールウッドの実用化以降、10年間の実績を評価いただき、新製品・新技術研究開発チームリーダーである内倉課長が日本木材保存学会より「木材保存技術奨励賞」を受賞しました。平成21年には、文化財保存協会のご指導ご教授により国宝「金沢城」の城壁にエコアコールウッドが採用されました。
その後、平成22年には世界遺産「厳島神社」の束柱の材料として、エコアコールウッドが採用されました。 以後、10年間にわたり毎年、海水につかる木材の改修工事に使用していただくことが決定いたしました。これはエコアコールウッドが木材として最も過酷であります海中における耐久性と安全性に対する実績が評価されたものです。今後も日本の伝統文化である神社やお城の改修工事での材料としてご活用いただき、国産材の利用普及に貢献していきたいと思います。
また平成23年にはNHK千葉放送会館、平成24年には阿蘇くまもと空港ターミナル、そして平成25年には静岡ガス本社ビルの外壁材(ルーバー・カーテンウォール)としてエコアコールウッドが採用され、商業ビル、公共建築物などの近代建築物への利用が拡大しています。
一方、土木用材においても平成23年エコアコールウッドグレーチングを平成26年にエコアコールウッドC種ガードレール、P種(横断・転落)防止柵、地盤改良材を開発し製造販売を開始しました。今後、土木用製品の製品化をすすめ、お客様のご要望に応えていきたいと考えております。さらに自然歩道施設製品として、エコアコールウッドの指導標、案内板などを規格製品化し、製造販売を開始しました。
「エコアコールウッド」という、これからの時代を担う新しい保存処理木材を開発した九州木材工業。これまでの長い歴史と伝統をしっかりと引き継ぎながら、「木の持つ可能性」を追求すべく、新たな挑戦を続けていくのです。